はじめに
初めて人前でプレゼンテーションをする。パワーポイントを立ち上げて眺めてみても、何から手をつければよいのやら。本ウェブサイトでは、そんな高校生の研究発表の手助けになるように、PowerPointによるプレゼンテーションスライドとA0版ポスターの作成方法について、ストーリーの組み立て方と併せて紹介していきます。このサイトに書いてあることが必ずしも正解というわけではありませんが、最初の一歩になるのではないかと思っています。
さて、多くの人に研究内容を正確に伝えるのは、大学生でも簡単なことではありません。それでも、しっかりとプレゼンテーションの準備をすれば、研究の面白さを伝えることができます。逆を言えば、しっかりと準備をしなければ、相手に伝えたいことを伝えることはできません。
研究発表の3つの心得
準備期間
このウェブページを訪れているのは、実験もほとんど終わり、そろそろプレゼンテーションの準備でもしようかなという段階の人かと思います。「発表用の資料は、1週間もあれば完成する」と考えているのであれば驚くと思いますが、しっかりとした発表をするためには発表用の資料を作りあげるのに1ヶ月程度は必要です。
1週間、毎日8時間をプレゼンテーションの準備だけに割けるのならばよいのですが、中学生や高校生はそんなに暇ではないはずです。忙しい時間の合間合間の作業になると思います。もし、もう1週間しか準備期間がないのであれば、残念ながらとても準備不足のままプレゼンテーション当日を迎えることになるでしょう。
プレゼン構成
研究発表はもれなく「背景・目的・方法・結果・考察」から構成されます。このうち「目的・方法・結果」が抜け落ちた発表は見たことがありませんが、「背景」と「考察」が抜け落ちてしまっている発表をしばしば見かけます。しかし、研究の面白さを伝える上で、背景と考察は欠かすことができません。
たとえば、私が千葉公園で外来性二足歩行アリがどこにどれくらいの密度で分布しているかを調査したとしましょう。そしてあなたに千葉公園の何地点かにおける外来性二足歩行アリの密度をただ伝えたならば、あなたはどう思うでしょうか。なぜ千葉公園で? なぜ外来性二足歩行アリを? なぜ密度を調べた? 一体全体なにを調べたかったの? と思うにちがいありません。そのような事態にならないために、研究発表において「背景」と「考察」は欠かせないのです。
デザインの価値
本ウェブページでは、研究発表のストーリーの組み立て方だけでなく、資料のデザインについても詳しく述べていきます。デザインというと見た目だけの問題のように思われがちですが、実験デザインという使われ方もするように、デザインは本来「設計する・組み立てる」といった意味をもっています。発表資料においてデザインは、自分の研究や考えを整理し組み立て表現する役割を果たしてくれます。
例えば、何の制約もなく資料を作り始めると、文字だらけで、むやみに派手で、ギュウギュウ詰めの自己満足なだけの資料ができあがってしまいます。読みやすい文字で、余白を十分にとる、むやみに色を使用しないなどのデザインのルールを制約にすると、情報を整理整頓して資料を洗練させていくことができます。情報を整理するためにデザインは絶好のツールなのです。