発表の構成

研究発表は、タイトルから始まり、序論、材料と方法、結果、考察の順で進んでいきます。発表に慣れないうちは、この流れに沿ってプレゼンテーションを組み立てていくのがよいでしょう。まずは各項目の役割を理解し、発表の大まかな流れを決めることから始めましょう。


目次:まずはタイトルを考えよう発表の流れを決める序論から考察まで


まずはタイトルを考えよう

タイトルというのは「私たちはこれからこんなことを話しますよ。」という宣言ですので、聴衆が発表を聞くか聞かないかの最初の判断材料になります。ただし、発表会の運営上、前もって発表順を決めなければならないことが多いので、ほとんどの場合、事前にタイトルを提出しなければなりません。全ての実験結果が出る前にタイトルを決めないといけないこともしばしばあります。研究発表のタイトルは基本の4つの型に分けられます。研究の進捗状況に応じて参考にしてください。研究内容をどうしても一言で言い表せない場合には、2つを組み合わせて主題・副題型にすることもできます。

「…に関する研究」や「…についての調査」などに代表されるタイトルです。研究テーマをそのままタイトルにする最も多いパターンでしょう。 個人的見解ですが、「に関する研究」や「についての調査」といった言葉は不要です。研究発表なのですから、そのことについて研究・調査したことは当然ですよね。その直前までをタイトルとしましょう。

■千葉県における二足歩行性外来アリの分布
■千葉県の二足歩行性外来アリの侵入経路
■研究発表におけるデザインの重要性
■被子植物の茎頂分裂組織の解剖学的研究

「…における〇〇法の開発」や「…についての〇〇解析」などのタイトルに代表されるように、手法の開発やその分野であらたな解析を実施した場合など、研究方法がメインとなる研究で使うことができます。あるいはテーマ・序論型タイトルでは壮大すぎて具体性に欠ける場合に実際にどんな研究を行なったのかを伝えたいときや、研究結果が得られていない状況でタイトルを決めないといけない場合にも使えます。

■千葉県10地点における外来性二足歩行アリのコドラート調査
■日本における外来性二足歩行アリの集団遺伝学的解析

なお、単に「…についての解析」や「…についての測定」などとする場合は、わざわざ「…についての○○」を書く必要はありません。解析や測定をすることは、研究をする上であまりも当たり前だからです。もっと重要なことを書くか、タイトルを短くしてスッキリさせるようが効果的なタイトルになります。

結果をタイトルにしてしまうパターンです。タイトルを読んだだけで瞬時に結果とそのインパクトを伝えることができます。すでに結果が得られていられればチャレンジしたいタイトルです。
ただし、結果が確定していないといけないので、結果に自信がない、その後の追加実験で結果が変わるかもしれないなどの場合は、避けたほうがよいでしょう。ほとんどの場合、タイトルの変更は認められません。

■千葉県の二足歩行生外来アリは小笠原諸島から侵入していた
■やはりMSゴシックよりメイリオの方が判読性が高い
■イヌは北を向いてうんちする

研究結果から新たな説や解釈が得られた場合、それは研究の一番の売りになります。そんなときは、新説や解釈をタイトルにして聴衆にアピールすることができます。結果型よりもかなり攻めのタイトルになってしまいます。「おいおい、その結果からはそこまでは言えないだろう」といった過大解釈(オーバーディスカッションといいますが)にならないよう気をつけないといけません。

■二足歩行性アリは空を飛んでやってきた
■フォントによって誤読のしやすさが変わる

研究内容をどうしても一言で言い表せない場合には、2つを組み合わせて主題・副題型にすることもできます。ただし、あまり長くなりすぎないように注意しましょう。

研究内容を一文でまとめきれないときに使います。
視野の大きな主題と具体性に触れる副題を組み合わせることができ、主に「大テーマと小テーマ」、「序論型と方法型」、「序論型と結果型」の組み合わせが考えられます。

大テーマと小テーマ型
■侵入生物の脅威:千葉県における外来性二足歩行アリの侵入

テーマ型と方法型
■研究発表におけるデザイン:MSゴシックと游ゴシックの判読性比較

テーマ型と結果型
■外来性二足歩行アリの侵入経路:小笠原諸島からやってきた

また、上の例とほぼ同じですが、具体的な主題と視野の大きな副題を組み合わせることも可能です。具体的には、次のようなことです。
■小笠原諸島からやってきた:外来性二足歩行アリの侵入経路

最初にキーワードを挙げてみよう

発表内容を限られた文字数で表現するのは簡単なことではありません。慣れないうちはキーワードを挙げて、優先順位をつけて考えていくのがオススメです。並べ替えたり、似た言葉を入れ替えたりしたものをいくつか作って、どれが一番ふさわしいのかじっくり考えてみましょう。友達の意見を聞いたり、先生にチェックしてもらうのもよいですね。また、発表の場や聴衆を想定して、真面目なタイトルから興味を掻き立てるようなキャッチーなタイトルまで、場にふさわしい雰囲気のタイトルを考えることも大切です。

発表の流れを決める

次は発表の中身についてです。研究発表も人が話す「お話」だと考えましょう。ですので、研究と無関係な序論であったり、序論から考察まで論理が破綻していたり、序論や目的で挙げた課題に対して結果や考察で答えを示せていなかったりと、話の流れが悪いと聴衆の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになってしまいます。さらには、実験手法や結果を十分説明できなければ、きちんとデータを取得していても疑わしい研究とさえ思われてしまいます。そうなってくると質疑応答もスムーズに進まず、お互いにとてもストレスを感じてしまします。

そうならないためには、「序論・材料と方法・結果・考察」の順にストーリーを論理的に組み立てることが大切です。背景から考察まで話の筋が通っているか、情報に過不足がないか、何度も何度も考えます。やってきたことをやってきた順序で話すことがベストとは限りません。持っているデータや成果の面白さ、重要さを効果的に伝えることのできるストーリーを考えることが大切です。「伝わるストーリー」を完成させましょう。

話題のスケールは「砂時計型」で展開します

それでは、背景から考察まで各項目の役割を理解して、発表のストーリー、つまりプレゼンテーションの構成を組み立てていきましょう。箇条書きのメモで十分ですので、各項目で話す内容をリストアップして流れを決めます。全体のストーリー構成を考えるときには、話のスケールが「砂時計」の形で変化するように意識しましょう。

序論は大きなスケールから始まる

多くの人に興味・関心をもってもらえるように、研究内容を一般化したスケールの大きな話題を導入とし、関連する先行研究を紹介しながら具体的な研究背景について説明します。その後、未解決の課題や疑問などを提示し、徐々に自分たちの研究目的へと話題を収束させていきましょう。

材料と方法、結果は、個別の話題を。

研究の内容がしっかりと理解できるように一つ一つ丁寧に事柄を説明をします。

考察は、徐々にスケールを大きくして終了します。

結果をまとめながら、得られた結果から考えられること、序論で挙げた課題や疑問がどのように解決されたのか、関連分野において自分たちの研究はどんな意義があったのかについて議論し、序論をさかのぼるように研究を昇華させていきましょう。

序論から考察まで

序論 Introduction

序論では、研究の背景と目的を説明します。研究の意義や目的を伝えて、聴衆と興味や疑問を共有できなければ、そのプレゼンテーションは失敗です。発表時間の1/3ほどを使って丁寧に説明します。以下の4つの項目を参考に、スケールの大きな話題から始めて、自分たちが行なった研究の目的まで話題を収束させていくようにしましょう。

1.導入

興味や関心、持っている知識は人によって様々です。できるだけ多くの人に発表を面白いと思ってもらうためには、導入として自分たちの研究テーマをより一般化した話題から始めるのが理想です。研究の面白さや科学的価値、重要性はどこにあるのかを伝えられるようにしましょう。図鑑や本、論文に書かれていることなどを参考にするのが一般的です。

2.具体的な背景

先行研究によってすでに明らかになっていることや現状、材料など、研究の具体的な背景を説明しましょう。課外活動で行なっている研究であれば、先輩たちの成果があるかもしれません。そういった内容はここに書きます。

3.問題点や課題、疑問

具体的な背景を受けて、問題点や未解決の課題、研究のきっかけとなった素直な疑問など、自分たちの研究で解決すべき課題を提示します。先輩のやってきた研究があるならば、これまでの問題点や弱点、さらに、そこから見えてきた新たな疑問や課題などにも触れる必要があるでしょう。

4.解決策

3で挙げた課題や問題、疑問について、どのように取り組むのか、解決策を提案します。さらに、研究の課題と解決策をあわせて自分たちの研究の目的を高らかに宣言しましょう。

材料と方法 Materials & Methods

研究に使用した材料と研究の手法を説明します。材料と方法の説明が不十分だと、その後の結果を理解することができなくなってしまいます。具体的に丁寧に説明することが欠かせませんが、研究と無関係な情報まで盛り込んでしまうと、聴衆は混乱してしまいます。必要な情報だけをきちんと伝えることが大切です。

結果 Results

研究発表のキモである実験や調査の結果を発表します。自分たちが出した結果を正しく理解してもらうために、図表を用いて一つ一つ丁寧に説明しましょう。もしもたくさんの実験を行なったのであれば、それぞれ何を明らかにするために行なった実験なのかを聴衆に伝える必要があります。実験の意図についても簡単に説明しながら進めるとよいでしょう。

考察 Disscusion

研究発表の最後を締めくくるのが考察です。結果で発表を終わりにしてはいけません。
考察で議論される項目は研究によって様々ですが、以下の項目を参考にして自分たちの研究の価値を伝えましょう。

  • まずは結果をまとめましょう。
  • 研究によって生まれた新たな解釈があれば提案しましょう。
  • 自分たちの研究によって初めて明らかになった点についてはアピールするのを忘れずに!!
  • 序論で挙げた課題や問題点、疑問がどのように解決されたのか説明しましょう。
  • 関連する分野における自分たちの研究の意義や、どのように寄与するのかについて述べましょう。
  • 未解決の課題が残っていたり、新たな研究展開が期待できるときには、今後の展開について触れて締めくくりましょう。

TOPIC|ストーリーは何度か崩壊する

研究発表や論文の構成を考えるとき、「目的を決めてから序論を書く」や「結果・結論を書いてから序論を書く」、「最初の序論から順に書き進める」など、人によって様々なやり方があります。自分に合ったやり方を見つけるのが一番なのですが、どの方法・順番で考えるにしても一度で研究発表の構成が決まることはありません。発表経験のほとんどない中学生や高校生では当然のことです。プレゼンテーションは崩壊と構築を繰り返しながら完成していくものです。早く準備を始めないとプレゼンテーションは完成しません。